So-net無料ブログ作成

新国立劇場 オペラ 「軍人たち」 [オペラぁ!]


ko_20000180_chirashi.jpg

1918年、ケルン近郊に生まれ、52歳でピストル自殺により世を去った、
ドイツの現代作曲家ベルント・アロイス・ツィンマーマンの名を歴史に刻むことになった問題作で、
1965年にドイツ・ケルン歌劇場で初演、当時47歳。

聖歌やジャズ、騒音、電子音、民族音楽など、
多彩な音のコラージュが展開される20世紀オペラの傑作であり、
極めて上演困難とされる本作を、
日本初演(演奏会形式)を手がけた芸術監督・若杉弘氏が指揮する入魂の新プロダクション。

「20世紀初頭までに培われてきたオペラの、
あらゆる音楽上・演奏上の技術的な要素が結集されている。」との事でしたが、
あらゆる音楽上・演奏上の形式的な要素は無視されており、
そこに音楽に求められる癒しは見当たらず、
聴衆は不安定な緊張とストレスを生む不協和音の集合体と向き合う事を余儀なくされます。
しかし、そうは言っても、
不快だとかつまらないとかいった事はなく、
ピットからはみ出す程の大編成のオーケストラと、
客席に配置されたスピーカーから放たれる大音響。
舞台の研ぎ澄まされた視覚的効果と、
人口密度の高い劇場客席の妙な一体感もあり、
イリュージョン世界へいざなわれるような、
覚醒された感覚に陥りました。


ウィリー・デッカー演出のこのプロダクションは、
1995年にドイツ・ドレスデンのザクセン州立歌劇場で制作されたものを、
2003年、オランダ・アムステルダムのネザーランド・オペラのために校訂されたもの。
新プロダクションと言いながら、どうして舞台画像があるのか不思議に思っていたら、
新国立劇場では始めてのプロダクション、という意味らしいです。

高さのある新国立劇場の舞台を横長の長方形に切り取ったボックス内がステージで、
その黒い床や壁には、
ランダムにかすれた白い筋が付いていて、
闇に揺れるススキなどのグラス系植物のようにも、
鉄板をグラインダーで傷付けた無機質的な背景にも見えます。
ストーリーの展開に合わせて椅子やテーブルがオブジェ的に配されたりしますが、
全てのシーンは同じステージで演じられます。
シンプルながらもミニマル的な簡素さはなく、
視覚的に印象的な効果を狙った演出で、
美術館でコンテンポラリーアートのインスタレーションを観ているような錯覚さえ覚えます。
そんな時のBGMも何だかこんな感じでは・・・。

登場人物は衣装で色分けされていて、
最初と最後は白い群集。
生前、死後の清い世界か平和な小市民を表現しているのか?
軍人たちは白い体の上に欲と血にまみれた赤い服装をまとい、
主役のマリーとその姉はグレーですが、
軍人たちに翻弄されるマリーはすこしづつ赤い持ち物を身に付けていきます。
欲望の象徴である「赤」がピンクと朱の混じった実に鮮やかに発色している所が皮肉です。

歌手についても、
極力個性を排する作曲者の意図があるようで、
誰が突出するという事もなく、
それぞれが個性を押し殺して、
総動員でひとつのテーマに取り組んでいるように見えました。

そして、
この上演のために新国立劇場の芸術監督になったとも言っていた指揮の若杉弘氏ですが、
難解な音符の羅列をよくあそこまで作り上げたものだと思いましたが、
カーテンコールでは足がおぼつかない感じで、
指揮も椅子に座って振っていたようでした。
前作の「魔弾の射手」では、ホワイエで元気な姿を見せてくれていましたが、
何だか心配です。


2008年5月7日 新国立劇場 オペラ 軍人たち(DIE SOLDATEN)

【作曲】B.A.ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann)
【原作】ヤーコプ・ミヒャエル・ラインホルト・レンツ(Jakob Michael Reinhold Lenz)

スタッフ
【指 揮】若杉 弘 (Wakasugi Hiroshi)
【演 出】ウィリー・デッカー (Willy Decker)
【美術・衣裳】ヴォルフガング・グスマン (Wolfgang Gussmann)
【照 明】フリーデヴァルト・デーゲン (Friedewalt Degen)
【再演演出】マイシェ・フンメル
【指揮補】トーマス・ミヒャエル・グリボー
【共同衣裳デザイナー】フラウケ・シェルナウ
【衣裳・ヘアメイク監修】ロビー・ダイヴァマン
【音 響】渡邉 邦男
【舞台監督】大澤 裕

 キャスト
【ヴェーゼナー】鹿野 由之 (Shikano Yoshiyuki)
【マリー】ヴィクトリア・ルキアネッツ (Victoria Loukianetz)
【シャルロッテ】山下 牧子 (Yamashita Makiko)
【ヴェーゼナーの老母】寺谷 千枝子 (Teratani Chieko)
【シュトルツィウス】クラウディオ・オテッリ (Claudio Otelli)
【シュトルツィウスの母】村松 桂子 (Muramatsu Keiko)
【フォン・シュパンハイム伯爵 大佐】斉木 健詞 (Saiki Kenji)
【デポルト】ピーター・ホーレ (Peter Hoare)
【ピルツェル 大尉】小山 陽二郎 (Koyama Yojiro)
【アイゼンハルト 従軍牧師】泉 良平 (Izumi Ryohei)
【オディー 大尉】小林 由樹 (Kobayashi Yoshiki)
【マリ 大尉】黒田 博 (Kuroda Hiroshi)
【3人の若い士官】中嶋 克彦 / 布施 雅也 / 倉石 真
【ド・ラ・ロッシュ伯爵夫人】森山 京子 (Moriyama Kyoko)
【若い伯爵・伯爵夫人の息子】高橋 淳 (Takahashi Jun)
【ラ・ロッシュ伯爵夫人の召使】木幡 雅志
【若い見習い士官】青鹿 博史
【酔った士官】川村 章仁
【3人の大尉】細岡 雅哉 / 藪内 俊弥 / 浅地 達也

【合唱指揮】三澤 洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団 (New National Theatre Chorus)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団(Tokyo Philharmonic Orchestra)


nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(6) 
共通テーマ:音楽

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 6